放射線の影響 Q&A

  • ベクレル(Bq)とは?

    放射能の強さを表す単位

    放射能の強さを表す単位で、1秒間に崩壊する原子核の数を意味します。
    例えば、1秒間に100個の原子核が崩壊して放射線を放出している場合は100Bqとなります。

  • 自然放射線による被ばくとは、どういうものですか?

    宇宙線や食物、大地等から受ける被ばく

    宇宙空間を飛び交う高エネルギー放射線(宇宙線)は常に地球上に降り注いでおり、この宇宙線からの被ばくが世界平均値で年間0.38mSv程度です。なお、宇宙線の量は、高度が高い程急激に多くなり、例えばメキシコシティ(標高2240m)では年間0.8mSv程度になります。

    自然界に存在する放射性同位元素が野菜や魚介類等に取込まれ、これらを食することを原因とした被ばくが世界平均値で年間0.23mSv程度あります。

    大地から受ける放射線の量が世界平均値で年間0.46mSv程度です。
    空気中のラドンなどの吸入から、世界平均値で年間1.33mSv程度の被ばくがあります。
    したがって、自然放射線による被ばくは上記の合計で、世界平均値2.4mSvとなります。

    ただし、自然放射線の量は地域差が大きく、日本は平均で年間1.5mSv程度と比較的自然放射線の量が少ないと言われていますが、ガラパリ(ブラジル)のように年間10mSv以上になる場所もあります。

  • 放射線とは?

    電磁波や粒子線のうち、物質との相互作用をする能力を持つもの

    電磁波(ラジオ波、テレビ波、赤外線、可視光、X線など)や粒子線(α線、β線、電子線等)のうち、物質との相互作用(電離、励起、散乱等)をする能力を持つものを放射線と言います。

  • 放射能とは?

    物質が放射線を自然に出す能力

    物質が放射線を自然に出す能力を放射能と言います。
    放出される放射線には、α線、β線、γ線などがあります。

  • 放射性同位元素(RI)とは?

    同位元素の中で放射能を持つもの

    原子は原子核と電子から構成され、原子核はさらに陽子と中性子から構成されていると言うのが、現在考えられている原子構造の概要です。なお、陽子と中性子の個数の合計を質量数と呼んでいます。
    この世に存在する多くの原子の中で、陽子の数が同じで中性子の数(質量数)が異なるものを同位元素(同位体)と言います。この同位元素の中で放射能を持つものが放射性同位元素です。

    例えば、天然に存在する水素の大部分は陽子1個の構成ですが、陽子1個と中性子1個(重水素)の構成や、陽子1個と中性子2個(三重水素)の構成も存在します。これら3種類は同位元素で。化学的性質はまったく同じです。
    なお、元素とは原子の性質も含めた概念で、これら3種類の原子は、同じ元素に所属する原子ということになります。これら3種類の内、三重水素だけが不安定で放射能を持ち、放射性同位元素です。

  • グレイ(Gy)とシーベルト(Sv)とは?また、その関係は?

    グレイ(Gy)は放射線により物質が吸収するエネルギー、シーベルト(Sv)は放射線の人体への影響を表す単位

    グレイ(Gy)は吸収線量の単位で、単位質量あたりに吸収されたエネルギーと定義されています。
    一方、生体(人体)の場合は、吸収線量が同じでも放射線の種類によって放射線の影響が異なります。この放射線の種類によって異なる影響を、同じ尺度で評価できるようにしたものが等価線量で、吸収線量に放射線の種類毎に決まった放射線荷重係数を乗じて求め、単位としてシーベルト(Sv)を使います。

    また、人体の組織によって放射線の影響が異なるため、等価線量に人体の組織ごとに与えられた組織荷重係数(0.01~0.12:組織荷重係数の総和は1)を乗じて補正したものが実効線量で、単位としてシーベルト(Sv)を使います。
    なお、医療で広く利用されているX線、γ線、電子線の放射線荷重係数は1であるため、

    吸収線量(Gy) = 等価線量(Sv)

    となります。

  • 妊娠中に胸部X線撮影をした時、腹部の防護をしてもらえませんでしたが大丈夫でしょうか?

    通常、胸部X線撮影で胎児に影響を与えことはない

    X線装置には必要な部分だけにX線を照射できるようにする絞り機構があるため、X線は胎児に直接照射されず、母体の胸部から発生した散乱線だけの影響しかありません。

    この散乱線は体内で発生するため腹部を防護しても防ぐことはできませんが、胸部から発生する散乱線はごくわずかで、胎児の位置で0.001mGy以下となり、胎児に何らかの影響を与える線量(しきい線量)100mGyに比べて十分低く、まったく問題になりません。

  • 入院中、胸部X線撮影を何度も撮られましたが、大丈夫でしょうか?

    胸部X線撮影1回の被ばく線量は非常に少なく、まったく問題にならない。

    急性期には、状態の把握や治療方針の決定等のため、頻繁に撮影が行われることがありますが、これは、放射線被ばくによるリスクより、検査で得られる利益の方が十分大きいと判断されたためです。

    胸部X線撮影1回の被ばく線量は非常に少なく、0.1mGy程度です。ただし、これは肺野部だけに限定された被ばくですから、全身の影響を考慮した実効線量に直すと0.027mSv程度になります。これは、成田空港からサンフランシスコ国際空港まで航空機で移動したときの実効線量とほぼ同じです。放射線被ばくによる発ガンは、100mGy以下では自然発生するもとの区別がつかないとされており、数十回撮影したとしても、まったく問題になりません。

  • 検診で毎年マンモグラフィを撮影していますが、かえって乳がんになる可能性はないのですか?

    マンモグラフィによる放射線被ばくは非常に微量で、マンモグラフィ検診の利益の方が高い

    マンモグラフィ検査はX線を使用して撮影しますので、放射線被ばくの問題が生じます。
    放射線防護上は、がんや白血病を発生させる線量には明確なしきい値はなく、線量に比例して確率が上昇すると仮定されていますが、原爆の調査等から最も感受性の高い組織でも200mGy以下の一時被ばくでは自然発生のガンと区別できないとされています。

    マンモグラフィによる放射線被ばくは非常に微量(2mGy程度)で、致命的発がんリスクは0.0009%と言われています。マンモグラフィ検診の利益と被ばくリスクを分析した結果、どの年代でも利益が被ばくのリスクを上回っています。